日本は住所がなくても公的支援をしなければならないと、法律(生活保護法第十九条 都道府県知事、市長及び社会福祉法に規定する福祉に関する事務所を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。
一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者
二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの)で定めた制度を持つ国である。だが実際には、「住むところがないなら生活保護は受けられない」と役所が、家のない人を追い返す悲しい国になっている。誇るべきを誇れないようにしているのだ。
これは行政による法律をねじ曲げての不正であり、詐欺である。
丸山真男は駅の放送「危険ですから白線の内側にお下りください」に腹を立てた。判断する主体はあんたじゃないと刷り込んでいるからである。これが「オレオレ詐欺」の蔓延を助けている。
NHKでは毎夕、「ストップ詐欺被害」と看板を掲げて紙芝居仕立ての番組を組んでいる。実際にあった「オレオレ詐欺」を紹介して最期に「~にはご用心」と要点を標語として示すのである。この標語は毎日更新されるから、もう千件は溜まったに違いない。いくら標語を繰り返しても、「オレオレ詐欺」はなくならない。そこにこの詐欺の厄介さがある。番組担当者はこの千件を暗記しているのだろうか、そんなことはあり得ない。
NHKの籾井会長は「政府が右と言っているものを我々が左と言うわけにはいかない」と発言して、自分自身とNHKと報道の信用を一気に下げてしまった。右を左と言うのは、詐欺である。籾井のこの発言を放置して置いて、「~にはご用心」としたり顔で言うその無神経さが、「オレオレ詐欺」を受け容れる大衆を作るのである。放送人自身が「政権に忠実な会長にはご用心」と言わなければ、アナウンサーや記者自体の信用性が地に落ちるのである。
どんなに詰まらない授業や訓示にも従順な振りを培養する点で学校の右に出るものはない。振りばかりを演じさせて、真実を洞察させない習慣を養っている。行為の良し悪しの判断は、お上がして下々は従う仕組みが網の目のように張り巡らされているのだ。
目の前で行われることへの批判精神を、全てを他者に委ねる態度と交換しているのだ。これは、飢餓と病気に苦しみながら、遂に聖戦そのものを疑う気持ちを殺し続けた過去から続いている。
判断を偏差値や占いで代替、集団に同化して安心した挙げ句が「オレオレ詐欺」なのさ。