「普通」の人間としての矜恃は我々に貧しさを強いる

  チャーチルは初めて乗った地下鉄で市民に囲まれ、意見を聞いたことがある。この対話で彼はナチ

ガンジーの矜恃は彼に牢獄を強いたが故に適切な判断をもたらした。

スと徹底抗戦する決意を固める。チャーチルが対ナチス戦に関するまともな判断で英国を導いたのは、戦争の素人=市民としての感覚を持っていたからだと思われる。(ただ、地下鉄での逸話は、映画用のfiction )

 Oさんが石神井高校長に生徒との対話を迫り、校長室の開放を要求した事とどこか似ている。この時君は石神井校長の校長という身分と校長室の隔離性が、彼の認識・判断を妨げていることに気付いていたのか。

 チャーチルは貴族生まれであったが、死ぬまで爵位を断り通し、「普通」の大英帝国市民としての誇りを保った。しかし印度やアフリカの植民地に対しては大英帝国の絶対優位を疑わなかった。ユダヤ人や社会主義者に対しても。

 それ故彼の世界観はヒトラー並みの偏見に塗れていた。

 「普通」の人間としての矜恃は我々に貧しさを強いるが、そこから生まれる他者や弱者への共感が適切な判断を導く。

「またやってしもてん」「堪忍やで」

   かつて旋盤実習棟の屋根裏は木造トラス構造が美しく、動力は天井の長い鉄軸と滑車とベルトで中央動力源から伝えられ、工場らしい錯綜する陰影とリズミカルな音が満ちていた。それが機械ごとの小型モーターに切り替わったのは1970年代半ば過ぎ。高校進学率は90%を超え、夜間高校では働く青...