ある年のある日 \\ 美しく力強い言葉

 

   Hate breeds hate, and love breeds love. Love means approving of children and that is essential in any school. You can't be on the side of children if you punish them and storm at them. Summerhill is a school in which the child knows that he is approved of.      Neill

 The function of the child is to live his own life - not the life that his anxious parents think he should live, nor a life according to the purpose of the educator who thinks he knows what is best. All this interference and guidance on the part of adults only produces a generation of robots.    Neill

 

 6月26日

 9.11事件被害者への「賠償金」が平均5000万円、アメリカ軍の「誤爆」によって殺されたアフガン人へは僅か5000円。という世界の非対称性。(住所のない日本人ホームレスに決して生活保護は届かないが、パスポートの無いウクライナ避難民は丁重に受け入れるという非対称性。非対称性は限度無くひろかる) と言論報道の自由の構造性について語った。

 「アメリカって自己中ね」と生徒の声が飛ぶ。覇権主義という言葉を持ち出そうとして思いとどまる。彼女たちの言葉を専門家やメディアが使うべきなのだ、そうすることによって、「学」を身近なものにする努力。

 6月28日

 「戦争には経済的背景がある。それで潤うものが必ず存在し、彼らの願望として戦争は実現する」

 「何故アメリカ軍は、アウシェビッツを爆撃しなかったのか」

  教室の後ろに向かって歩きながら話を進め発問する時、生徒達が体を回しながら目で追う。教育実習での経験を思い起こす。

  「戦争によって世界がどんどん何処も同じ世界になって行くような気がしてイヤ」と授業後話しに来る。うまく戦争の過程を捉えている。グローバル化・オルタナチィブ・エスニック・民族主義という単語をだしてみる。

 「先生それ百科事典で調べられる?」と言う。「教えて」ではない。自分で調べたいという強い欲求。


7月1日 

   疲れ切って机に突っ伏している生徒に「寝てていいよ」と言うと、 

 「起きます、大丈夫です」と重たそうに顔を上げてペンを握る。授業が終る頃にはすっかり元気になって、話を聞きに寄って来る。  

  昼休みの廊下での質問。

 「パレスチナ問題におけるイギリスの役割」と複雑な問題だった。答えていると、一人、三人と寄って来てずーっと聞いている。・・・

  反対に僕も聞く。

 「授業が始まる前に、茶髪やピアスを注意されたら、授業は半分ぐらいしか入っていかないかい」

  「うぅん、全然、聞かないで寝ちゃう」   

  「・・・化粧がどぎつくなる時の君は、必死で自分の存在を守ろうとしているのかい」と聞くと、長く考えて少し微笑む。友達も聞いている。

 「自分の立っている場所がどんどん無くなって行く、狭くなって行く不安をどうにも出来ないように感じる・・・そう言うことかい」と言ってみた。すると隣の生徒が、

 「そういうことだよ」と呟く。 本人はじーっと考えていた。


  言葉を探り当てようと藻掻く、言葉さえ見つければ・・・と。教室はこれに応える構造を持つ必要がある。どの学校にも、あらゆる階層の多様な若者が集い、自由に社会とつなかる。そんな環境が。生徒たちは世界を見いだし社会を造る主体、与える解釈を受け入れるだけの客体では無い。  

 表現に向かえない不安・不満は、いつか様々な暴力として現れる。必ず。先ず外へ向けて、そして最後は自分自身に向かって。

  諦める選択肢は彼らにない。成長期の肉体は不安定だが、精神は猛烈な勢いで藻掻き回転している。そんな時期に既存の「成果」に依存するのは馬鹿げている。

 少年は困難さがあれば、それに立ち向かう。だが教師は困難からは逃げる。どうせわからないと逃げる。逃げているのは昔少年であった筈の教師、逃げているうちに考えることを忘れてしまう教師。

 少年にとって重要なのは、考える価値があるという事実。それを示す役割が教師にはある。難しく複雑なことを、誰にも分かるように構成し直す。それを繰り返すうちに、少年は難しさ困難さをそのまま引き受ける。それまで僕らは待ち続けねばならない。 

 分かり易く説明する困難を引き受けるうちに、教師も美しく力強い言葉を獲得出来る。体罰や部活の世界の、芸能人溢れるメディアの世界の、言葉が貧弱で攻撃的なのは。美しく力強い自前の言葉を獲得出来ないからだ。 

もし、君の庭が貴金属だらけになったら

   夢のような幸運、たった一掴みでどんな贅沢も思いのままだ。ひとかけらの土も糞や汚物もない。大リーグ「大谷」の幸運は、さしずめプラチナか巨大なルビー相当だろうか。プロゴルフも競艇も競馬も囲碁将棋gamerもオリンピックplayerもその稼ぎ高が、画面や紙面を賑わす。それにつられ...