「100歳まで生きる」と公言していた稀代の「経営者」ロックフェラーは、98歳の誕生日を目前にして亡くなった。死にゆく彼をフォードが見舞ったときの会話。
ロックフェラー「さらばだ、天国で会おう」
フォード「あなたが天国に行けるならね」
フォードはロックフェラーが天国に行けないことを見抜いていたのか。ならばフォードはマルコによる福音を正しく読んでいたことになる。
「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」(マルコ10:25)
それにしても冷酷な男だ。フォードは自分だけは天国に入れると本気で信じていたのか。
フォード社は1960年代後半、軽量廉価の「ピント」を設計した。日本製小型車との競争のため、短期間開発は至上命令だった。結果、ガソリンタンクは後部車軸とバンパーの間に置かれ差動装置のボルトは露出、衝突の衝撃でガソリンタンクを刺し通す恐れがあった。
このままではピントが、新基準には合格しないことを技術者たちは知っていた。新たな基準時速20マイル試験では、12回の後部衝突のうち11回が不合格、衝突によりガソリンタンクが破裂し車体は炎上。安全のための改良には、1台あたり11$の追加投資が見込まれた。
フォード社担当取締役は、「衝突事故がもたらす燃料の漏洩と火災による死亡事故」という文書を作成、命と追加投資を天秤にかけた。
改良のための追加投資=販売台数1250万台×単位費用11$=約178億円
社会的損益=死傷者の出る火災180件×(死亡による損失20万$/件+負傷による損失67千$/件)+車両炎上2100台×車両損失700$=約64億円
この結果をもとに「経営の専門家」フォードは、改良なしのまま販売を続け、人命を軽視する策に踏み切ってしまった。
1972年、追突されたピントが発火・炎上、運転手が死亡し同乗者が大火傷を負った。この事故をめぐる製造者責任訴訟で、フォード社はガソリンタンク炎上の危険性を知りながら、経済的収支計算結果に基づき販売を続けたという事実が、退職技術者らによって暴露されるに至った。
「ヒトラーの謝辞 と独大鷲十字章」を独大使から受けるフォード |
フォードとヒトラーの関係も、彼が「天国」から遠いことを現している。しかし福音や経典は、何時の時代も「富と力」のために都合よく捻じ曲げられてきた。天国がないことを最もよく知っているのは彼らである。
コロナ分科会の尾身「専門家」が病気治療の専門家ではなく巨大病院網の経営者でしかないように、原発も宗教も経営が理論や理念を容易く踏みにじる。学校の教頭が副校長になったのも、校長の授業を禁じたのも教育の専門家としての職能を奪い、教委や文科省の尖兵たる経営者としての自覚を促すために他ならない。
「経営学」修士号やメダルに魅了されるのは、己の価値を損なうだけではない、積極的に他者の価値を棄損することを知るべきである。
まさしく、持たざる者、貧しき者は幸いなりである、天国や極楽のありなしに関わらず。
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