共謀罪の苗床

 この時期に、皇族の婚約が報道された。政治情勢が緊迫してくると、芸能人のスキャンダルや皇族の慶事が突然マスコミにリークされる。強行採決が迫っている。

  学力試験ではなんら問題ない転校希望生が、「過激派」シンパの疑いがあるとの情報がもたらされたことがある。合格判定会議が大荒れになって、夜半に及んだ。1970年代、リベラルな校風を誇る高校での出来事だ。
 大学時代、僕は「過激派」や右翼に囲まれ吊し上られたことがある、ただのチンピラにも囲まれた。
 教師たちは数年前の高校紛争で、心身共に「懲りて」いた。だがそれが「過激派シンパの疑い」だけで排除する根拠になるのか。たとえ転校生が「過激派」そのものであったとしても、学ぶ権利は奪えない。存在自体を処罰の対象にすることは出来ないからだ。もし万が一現実に犯罪を起こせばそれは刑法の範疇であり、司法官憲の任務である。 学校では、たとえ暴力的行為があっても指導で対処したい。
  この時期既に、共謀罪の苗床は身近なところに開かれ、種を蒔くばかりになっていた。
 共謀罪の種」で書いた喫煙「指導」や学校の「過激派」対策に囲まれて、思春期を過ごせば、一方では恐れだけて処罰を肯定する価値観が、他方では教師や学校の「指導」への拒否感・絶望感がじわじわと若者の中に蓄積される。いずれにしても強い政府の施策を肯定する方向に流れてしまう。なぜなら学校や教師に対する反感・反発は、「日教組」への反感に置き換わり、政権は「日教組」退治の桃太郎と化するからである。首相が国会で野党議員に「日教組」とヤジを飛ばしても問題化しないのはそのためである。もし「日教組」ではなく、ある宗教団体の名を叫んでいたら大きな問題になっていたに違いない。
 法教育研究者が昨年9月に高校生を対象に調査したところ、以下のような結果が出ている。(朝日新聞 http://www.asahi.com/articles/DA3S12883845.html) 
 「多くの人命にかかわる重大な犯罪が発生しようとしている場合、共犯者と考えられる人に自白を強要してもいいと思うか」の問いに次のように反応している。
 とてもあてはまる25.6% まああてはまる42.2%に対して、あまりあてはまらない23.2% まったくあてはまらない7.0%。   高校生のうち自白強要肯定する者の割合が67%を超えているのだ。

  共謀罪は一般市民には適用されないと喧伝されている。だが共謀罪の苗床や種は、社会のあらゆる組織で息を吹き返すだろう。

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