2010年6月施行の改正パワハラ防止法(労働施策総合推進法)で相談窓口の設置など対策を大企業に義務付たが、佐川急便の事件では通報はあったものの調査はなく、企業任せの実態が露呈した。
罰則規定抜きの法いじりはこうした悲劇を繰り返す。繰り返すうちに担当官僚は異動して問題は受け継がれない。異動の際彼らは必ず「在任中は大過なく」と言い残す。彼らは主権者の大過なと眼中にないのだ。
パワハラについて厚労省は、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超え、③労働者の就業環境が害される、この3つを満たす威圧的な叱責など精神的攻撃や身体的攻撃を指す場合をあげている。
労働局等に寄せられた「いじめ・嫌がらせ」相談は増え続け、20年度は7万9190件と9年連続で最多を記録。トヨタ自動車や三菱電機の自殺などは、稀ではあるが労災認定された。
パワハラ防止法では被害者が自殺や退職に追いやられる案件だけを対象にしてはいない。
学校の入学・卒業式での管理職や教委による叱責脅迫は、パワハラではないのか。保護者や生徒そして同僚教師の見ている前での管理職や教委による叱責脅迫は何故放置されてきたのか。
2017年5月大津市のホテルで開かれた県教委と県立学校校長らの懇親会で、県教委の男性職員が男性校長から「君が代斉唱の伴奏が止まった」などと叱責され、人前で土下座していたことが分かった。職員はその後、仕事を休むようになり、昨年度末で退職した。県教委は「職員からの申し出がない」との理由でパワハラに当たるかなどの調査はせず、校長も処分していない。 複数の関係者によると、当日は100人近くの出席者がおり酒類も振る舞われる中、会の終わりごろ研修会で出席者が歌う君が代の伴奏が途中で止まるなど進行が乱れたとして、研修会で進行役を務めた男性職員が校長の叱責を受け土下座した。会場にいた人は「怒鳴り声が聞こえ、2人の間に止めに入った人もいた」と、ほかの出席者も「職員が一方的に怒られていた」、「注意の仕方に配慮が必要だった」と話す。
男性職員は届けを出し休む状態が続き、退職を申し出た。県教委の聞き取りに対し、「自分の仕事に対する行き詰まりを感じた」との趣旨の話をした、という。懇親会の前は休みがちだった事実はなく、関係者は「まじめで優秀な職員だった」と話す。
米原高校では2020年、女性教諭が校長の激しい叱責直後に過呼吸に陥り、その後学校を休んだ。県教委によると、校長は昨年同一学年の同一教科を教諭2人に担当させ、2人が別々に定期テストを作成して学級ごとの点差が大きくなると、女性教諭に対し「どう責任を取るんや」と厳しく追及。教諭はその後、医師の診断を受け1カ月休んだ。校長は今年3月にも、生徒に皆勤賞を独自に贈った男性教諭を必要以上に叱責し、「お前らの仕事は遊びや」と侮辱した、という。こちらの場合さすがに県教委も、米原高校長を減給10分の1としている。
ILO総会で、「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶に関する条約」が採択された瞬間 |
ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会が学校での〝君が代”強制問題で日本政府に是正を勧告。2018年に採択、2019年に正式に承認し,世界に公表。
この時ユネスコは、国歌斉唱時に「起立や斉唱を静かに拒否することは,職場という環境においてさえ,個人的な領域の市民的権利を保持する個々の教員の権利に含まれる」と指摘している
1999年,「国旗及び国歌に関する法律」が制定・施行された時も野中内閣官房長官は
「式典において,起立する自由もあれば,また,起立しない自由もあろうかと思うし,また,斉唱する自由もあれば,斉唱しない自由もあろうかと思うわけで,この法制化はそれ画一的にしようというわけではない」と公式に言っていた。
ところが東京では2003年から,大阪府では2011年から,公立学校の卒業式や入学式の国歌斉唱時に教職員に対して起立・斉唱を命ずる職務命令が出され、そして起立斉唱しない者に対して,懲戒処分が行われてきた。500名を越す被処分者のうち、東京と大阪が8割を占める。
続く
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