皇帝と大臣は「愚民政策」をとるし、人民にはまた「愚君政策」がある。 魯迅『談皇帝』英国の学者らが、TVの娯楽ショー番組は知能に否定的影響を及ぼしていると警鐘を鳴らしている。
Queen Mary University of Londonは過去30年のイタリアの娯楽番組の拡大を調査。就学前から娯楽番組を視聴してきたイタリアの成人に認知機能テストを行ったところ、こうした番組を見なかったイタリア人に比べて5%悪い結果が出た。また年齢別ではより強い悪影響が出るのは55歳以上の人であることもわかった。(The Daily Mail紙)
丁度この時期にイタリアでは、ベルルスコーニの大手メディアグループ「Mediaset S.p.A.」が人気を博している。
同じく英国通信社Reutersの「Digital News Report」も面白い報告をしている。2016のReport←クリック に依れば、政治や経済など硬派なニュースに関心を寄せる人の割合では日本が49%と最低。ところが、芸能やスポーツなどの軟派ニュースでは逆に日本が突出。Reutersは「極めて特異な現象だ」と言う。
硬派ニュースとは、政治や国際、経済などのニュース。軟派とは、エンターテイメントをはじめとした芸能、スポーツといった分野を指す。
硬派ニュースに関心を寄せる人の割合はギリシャが81%、スペイン77%、ドイツ76%、米国74%と高いのに対し、日本は49%と調査26か国中、最低。
ギリシャが硬派ニュースに関心を寄せるのは、ギリシャが金融危機、失業、難民など切羽詰まった問題を抱えていて当然と言える。だが日本も、政権腐敗、高齢化、財政破綻、格差社会など多くの問題が山積して関心を持たないわけにはいかないはず。なのに、日本では軟派ニュースに関心を持つ人の割合が34%と、26か国の中で最も高い。さらに注目すべきは、軟派ニュースに関心を持つ若者の割合が日本で極端に高いことだ。
18~24歳の若者で軟派ニュース寄りの割合を国別で比較すると、英国が17%、スペイン18%、ドイツも18%、米国23%、イタリア29%に対し、日本は58%と飛び抜けた数値を示している。
Digital News Reportは、「パブリッシャーでないポータルが、日本市場を完全制覇してきた」ことの特異性を指摘している。日本では、海外のような伝統パブリッシャーの優れたニュースサイトが生まれてこなかったし、人材も十分に育ってこなかった。これは取り返しのつかない痛手である。
日本人の、分けても若者の関心の有り様が異様なまでに目立つのはこのためだ。その結果、政治や社会の問題に無関心であるばかりか、見もせずそこから逃げている。
まさに「逃げるから怖」くなるのである。逃げ腰の恐怖に駆られの態度が「忖度」である。正対する暇も勇気も持てず、見えぬ対象を過大に評価して、降伏する前に自ら擦り寄るのである。ナチ絶滅収容所に於ける「カポ(囚人を監視する囚人)」同様の存在にさえ成る。マスコミや労組に内部から「自己規制」を働きかけるのはこうした連中である。気がつけば、政治的、社会的権利をはぎ取られ、ただ生きているだけの『むき出しの生』と化して、自立・抵抗する者を罵るようになる。
3S政策(Screen(スクリーン=映画)、Sport(スポーツ=プロスポーツの観戦)、Sex(セックス=性産業)を用いて大衆の関心を政治から逸らす愚民政策 )は、70年をかけて根深く定着したばかりか進化発展したわけだ。その先頭に立ったのが、読売の正力松太郎である。
TV産業とインターネットは、3SにShoppingを加えていよいよ醜悪化して国民を「受け身」にしている。
街の景観が広告で際立って汚く・煩く、乱雑になった。ここまで酷い国があろうか。考える事と世界に向き合う事から隔離され、それでも居直って「クール」とふんぞり返っていられるのは、自由主義的規制緩和政策のなせる技である。
学校も3S政策に抵抗したとは言いがたい。何故なら繁華街への立ち入り禁止、有害図書禁止といった対策はかえって3Sへの好奇心を煽ったからである。政治活動や社会的活動に繋がる「恐れのある」クラブや自治活動を抑圧すれば、好奇心溢れる少年たちは「いけない」ことに向かうのである。むしろ3S政策とは何か、青少年の健全育成とは何か、真正面から捉える授業が必要だったのた。
「ファシズムとは・・独裁者の言葉に突き動かされるのではなく、そんたくや自己規制、自粛といった日本人の『得意』な振る舞いによって静かに広がっていくということだ。」 辺見庸
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