原発=『海温め装置』暴走に見合う森林育成の義務が電力会社と政府にはある

原発は『海温め装置』である 水戸巌
 世界で最も古い英国の日刊紙「The Times」が、「東京五輪では選手だけでなく観客も極度の蒸し暑さによる熱射病で死亡するリスクにさらされている」と報じたのは今年1月のことだ。それが連日の熱中症死亡で現実のものとなった。07/23の時点で、熱中症死者は65人(共同通信調べ)に達している。
 この異常な暑さの連続は、偏西風の蛇行など気候の気まぐれだけによるものではない。生産活動による地球温暖化に、原発の廃熱が加わったものだ。
 原発事故までは、日本の55基原発全体から1年間に1000億トンの温めた水が排出されていた。日本全土に降る雨の量は1年間で6500億t、そのうち川に流れるのは4000億t。つまり原発は、毎年日本の川を流れる水の4分の1に相当する量を7℃温めて海に戻していた。原発事故で原発の稼働中止が相次いだが、既に6基稼働、再稼働準備中6基。その他に再稼働申請が11基・・・。

 原発のエネルギーの2/3は海に廃棄され海を温めているとして、原発を『海温め装置』と呼んだのは、放射線物理学者水戸巌博士であった。放射能だけでなく膨大な量の熱エネルギーが海水中に放出され、蓄積され続けてきたのである。

   異常高温は2020年東京五輪だけの問題ではない。興行は、中止したり日程を変えれば済む。だがこの列島に住まざるを得ない者にとっては、放射能と共に永遠に生命を脅かし続ける問題なのだ。 打ち水や、スポーツ飲料などの自己責任で誤魔化されて堪るか。地球環境を効果的に冷やす機能は、公共財としての森林にしかない。
 『海温め装置』=原発建設を推進してきた電力会社と政府には、少なくとも原発から放出した廃熱を吸収する広さの森林を、都市とその周辺に育て管理する義務がある。全ての交差点に大木を植え、駐車場は緑化し、全ての駅前を小さな森林に造り替える必要がある。自社の看板や広告が見えなくて困ると街路樹を切り倒した企業には、切り倒した樹の数十倍を過去に遡って植林させねば成るまい。原発対策を、原発立地自治体に補助金を支給するだけに止めた行政の無責任も厳しく問う必要がある。にも関わらず、五輪を錦の御旗に街路樹を切り倒しているのだ。
 敷地に大木を植える個人や組織には積極的な免税措置、規制緩和で敷地一杯に建てた場合には、植林の義務を課す必要がある。

 2020東京五輪は、招致委員会が「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」と世界を欺した結果だ。他人の財布に手を突っ込み「おもてなし」と言って、五輪を東京に招致した者には責任がある。放射能に汚染され続ける大気と、食物と異常高温で「おもてなし」するつもりか。

 高校生や中学生の「部活」にとって、異常高温は警戒のレベルではなく中止のレベルである。それを敢えて無視して連日の練習を強行するのは、狂気の沙汰である。まさか2020年のオリンピックで外国選手が暑さのために次々脱落するのを尻目に、メダルを量産する算段をしているのではあるまいな。
 東京五輪組織委員会会長森喜朗は 「この暑さでやれるという確信を得ないといけない。ある意味、五輪関係者にとってはチャンスで、本当に大丈夫か、どう暑さに打ち勝つか、何の問題もなくやれたかを試すには、こんな機会はない」
 スポーツは権利である、国威発揚の手段ではない。目先の成果の為に、若者の生命を使い捨てにする思想は戦中の「零戦」設計に如実に表れていた。それを美化する風潮の中でのオリンピックである。

追記 1964年オリンピックは、10月であった。2020年の場合は、それをわざわざ暑い盛りの7月に持ってきた。アメリカのプロスポーツ業界に配慮した為である。従属はここにまで及んでいるのだ。それが、美しい日本の実態である。

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