海流に乗って漂う流れ藻には、稚魚や、エビやワレカラ等の節足動物などが集まる。また、流れ藻にはブリやアジなどの重要水産資源の稚仔魚も群れる。サンマなどは流れ藻に産卵する。
海洋水面には、隠れる場は少ない。流れ藻は流木とともに弱い水産生物が身を隠し生き延びる場所である。ハナオコゼなどはそこに住み着き生活している。
ウミガメも流木に身を寄せる。手漕ぎや原始的な帆で漁をしていた頃の漁師が、難破して海洋を漂っていたときこの流れ藻に救われたことも多いに違いない。椰子の実が漂えば水分もとれる。魚もいる、海藻もある。この世の竜宮に見えただろう。生きて浜辺に帰り着いた漁師が語って聞かせた実話が、浦島太郎を産んだ。
大洋の生態系に流れ藻が不可欠なように、都市には森林と共に小さな無数の緑地が必要である。海の流れ藻のように鳥や小動物が身を隠し繁殖する場所であるだけではなく、気候を和らげ水と空気を循環させ浄化する。何よりも人々を結び安らぎを与える場所として。
流れ藻を維持するためには、海洋汚染を止めねばならぬ。特にプラスチック。命の揺り籠が、墓場になり始めている。
卒業記念に1人10本の植樹を義務づける法案が、先月フィリピン国会で環境対策として通過した。議員立法である。
フィリピンでは毎年、1200万人を超える生徒が小学校を、約500万人が高校を、そして約50万人の大学生が卒業を迎える。この新法が効果的に実行されれば、毎年少なくとも1億7,500万本の新しい木が、フィリピンに植えられる。順調に進めば、一世代の間に5,250億本もの植樹が可能となる。日本でも必要だ。ただし学校ではなく温暖化に責任のある企業の義務として。特に駐車場や線路際、街角とビル側面
屋上の緑化はクーラー設置より好ましい効果が期待できる。利権が生じなければどんな政策も実現しないだろうが。
タイやベトナムのスーパーでは、使い捨てのビニール袋の代わりにバナナの葉を使用し始めている。環境に良いだけではなく美しく殺菌効果もある。ささやかで根源的な日常の「竜宮」である。
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