他人の痛みはいくらでも我慢出来る

女の子の背中には人形が背負われている
彼女は自分の痛みも知らない
 偏頭痛が持病になったのは20代。七転八倒の苦しみを誰も理解しない。痛みの最中、自殺を考えた。医者も平然と「痛みで死んだ人はいません」と言う始末。確かに震えながら吐き数時間寝れば、酒が飲めるほど快活になりはする。 偏頭痛の治療法が劇的に進化したのは、京大病院の頭痛専門医が偏頭痛を発症してからだ。彼は言った「偏頭痛の痛みがどんなに激しく苦しいものか、やっと分かった」と。 酷い話である。「他人の痛みはいくらでも我慢出来る」のだ。 

 妹が嚥下出来なくなった。飲み込ませようとして、介助者が「はいゴックン」と言う度に、妹は「ゴックン」と言うだけ。口の中に食べ物が溢れた。喉を通らなければ栄養は、点滴やチューブに頼るしか無い。どんどん衰弱する。
 「入院が必要です、それでも数週間の命でしょう」と医者は言う。しかし妹は、点滴やチューブによる延命を頑なに拒んだ。
 嚥下には、喉の筋肉と神経が関わっている筈。夜分医者を訪ね、尋ねた。喉にある神経の塊の機能を、喋ることで促すことが出来るのでは無いかと。入院は取りやめになった。
 次の日妹に「飲み込むためには喉の筋肉を動かす必要がある。喋ることと飲み込むことにはきっと繫がりがある。何でもいいから喋れ」と促した。彼女は「何でもいいの」と、とりとめなく喋り始めた。 昼が近付き、水を飲ませると飲み込んだ。本人も周りも驚いた。流動食も飲み込んだ。
 嚥下について、専門家たちが毎日患者を目にしていながら、「あーん、ゴックンしましょう」で済ますことに恐怖を覚えた。
 妹はそれから一年生きた。造血機能も働かなくなり輸血なしでは生きられないところまで生きた。輸血を拒否して妹は眠るように亡くなった。

 職場や地域での自身の自治活動から逃げていた者が、分掌によって生徒たちの「自治」指導をすることに強い違和感がある。嚥下機能を無くした年寄りに「はい、あーんして、ゴックン」と言うような心許なさを覚える。
 「米軍がイラン革命防衛隊スレイマニ司令官を殺害。イランは報復宣言」の報道を受けての、世界と日本のTwitterのトレンド差に注目が集まった。 TwitterのトレンドとはTwitter内で使われた用語の頻度のことである。つまりTwitterを利用する人々の関心は何かを知ることが出来る。 
  2020 年 1 月 05 日 の各国twitterトレンド1位 アメリカ・カナダ・イギリスでは Iran 
 ドイツ・フランス・ロシアではWWⅢ(第三次世界大戦) 
 日本ではBABA嵐 (人気タレントによる「ババ抜き」遊びの中継)   日本のTwitterトレンドには29位まで、中東関係の用語は一つもない。
 ラクビーで日本中が酔い、口にした「ワンチーム」の実態はこの程度のものである。現実逃避の幼児的自己愛に過ぎず、底が浅い。それに相応しくこの国の首相は、この重要な期間をゴルフとグルメ三昧で過ごし、恥じていない。

 自治活動を学校で「指導」しているのは日本だけ。その成果が、世界的危機への徹底した無関心として現れている。

 嚥下出来ない老人に「あーん・・・」を繰り返し、点滴とチューブに依存させるのを指導や医療とは言わない。だが依存させる側には、虚妄の満足感が残る。虚妄の満足経験は累積して「指導」の体系を作る。
 文科省が指導要領で自治活動の指導を義務づけているのは、その効果が無いばかりか逆効果である事を熟知しているからだ。

 停退学などの処分をする権限を持つ部署が自治指導を兼ねるのを、なぜおかしいと思わないまま今日まで来たのか。憲兵が労組や政党を導くような不気味さを感じる。
 戦前の内務省的発想から、学校は未だに解放されていないからだ。思想や素行の善導意識が蔓延る。

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