自分で「スゴイ」「クール」と言い続けねばならぬ惨め 1

馴れない洋装で乱痴気騒ぎが鹿鳴館の文明開化
 自分の取るに足りない行為や素質を「俺ってスゴクネ?」と自賛し同調を迫る口調が、最近甚だしい。 他方LGBT、障害者、老人や病人を、非生産的と罵る国会議員や閣僚がのさばっている。では、天皇家や皇族・華族はどうなんだ。何を生産していたというのか。新平民を作り差別と貧困を固定維持したと誇り、沖縄を基地として米国に提供して従属化に貢献したとでも言うか。
 
 華族令(明治17年)で、512家が爵位を持った。
 公爵11家--臣籍になった皇族、摂家(公家)、徳川将軍家
 侯爵24家--清華家(摂家に次ぐ公家)、徳川御三家、15万石以上の大名
 伯爵76家--堂上家(大納言、昇殿を許された公家)、徳川御三卿、5万石以上の大名
 子爵327家--堂上家(大納言より下の公家)、5万石以下の大名
 男爵74家--御三家の付け家老や大名・公家の分家・寺社門跡
  
 その後、維新の功労者、日清日露戦争の軍人、財閥当主や学者などがお手盛りで加わり、最終的には913家(1,016人)が華族となり、敗戦を迎えた。四民平等を唄いながらこの様だ。
 ズルもある、三条家は清華で本来は侯爵だが公爵に、岩倉家は子爵のはずが公爵に、官軍側の島津・毛利家も公爵となり、維新の立役者の大久保・木戸家も侯爵、伊藤博文・井上馨・松方正義・山形有朋なども伯爵になった。
 福沢諭吉は、爵位の代わりに5万円(明治33年の教員の初任給11円)を貰い、勲功華族は財閥当主を除き、明治期を通じ、伯爵35,000円、子爵20,000円、男爵10,000円を公債として受け取った。
 彼らの多くは、一等地に広大な屋敷を構えそれぞれ数百人の使用人を抱えていた。その対極に膨大な、被差別貧困を生産固定した。

 天皇家については、渡辺清が『砕かれた神』で「マッカーサー司令部の発表によると、皇室の財産は、所蔵の美術晶、宝石、金銀の塊は別にしても、15億9000万円もあるのだという。これにはおれも心底びっくりした」と書いているが、昭和20年度の国家歳出は、215億円である。この中には、あらゆる国家の王家が海外(その殆どは、スイスである。この国は、預金者の秘密を守ることを絶対的義務としている)に秘匿した資産は含まれていない。

 トルコは、明治維新を手本にした親日国家と伝えられる。日露戦争(1905年)でロシアに辛くも勝利したことが、数度にわたる対ロシア戦争に負け続けた「オスマントルコ帝国」民衆の積もり積もった鬱憤を晴らしたことは事実で、「トーゴー」「ノギ」の名称が通りや商品に子どもにつけられた。
 だが、最も彼らを感激させたのは、それに先立つ1890年の軍艦遭難事件に於ける救助活動である。日本との友好親善の日程を終え、帰国の途にあったオスマントルコ軍艦・エルトゥールル号が台風で沈没。紀伊半島沖で死者587名、生存者69名の大惨事となった。この時、付近の漁民たちが村をあげて、夜を徹しの救出にあたった。遭難した人を人肌であたため、非常用として備蓄していた食料をすべて提供している。また、犠牲者の遺体は引き上げ丁重に葬った。民間義捐金も集まり、政府も生存者を送り届けている。

 だが、近代トルコ建国の父ケマル・パシャが、それに感謝はしたものの、近代化方針や政策で日本に学んだと僕は考えない。
 例えばケマル・パシャ、即ちアタチュルク大統領は、オスマントルコ帝国メフメット6世の帝位を剥奪のうえ国外追放して帝国を解体、民族国家主人公としての国民の地位を明確にしたのである。
 領土を傲慢に拡大し帝国を気取り、爵位を乱発した日本とは目指した方向が根本的に違う。 維新の立役者福沢はこう言っているのだ。
 「・・・我が輩が外国人に対して不平を抱いているのは、いまだに外国人の圧制を受けているからである。我が輩の願いは、この圧制を圧制して、世界中の圧制を独占したいということだけである」『福沢諭吉全集第八巻 p64
 もし日本がトルコに近ければ、英仏伊独に並んでトルコ分割に狂奔したに違いない。         
  
 エルトゥールル号遭難救助が如何にトルコ人を感激させ、永く記憶に留めたかは、約1世紀後の1985年突如示される。 イランイラク戦争の激化する中、3月17日イラク大統領が「今から48時間後、イラン上空を飛ぶすべての飛行機を打ち落とす」と表明。当時イランには日本の企業関係者やその家族などがいた。急ぎテヘラン空港に向かったものの、どの飛行機も満席。他国は自国の特別の救援機を出して救出したが、日本は対応が遅れた。同盟関係を言うアメリカにも断られ、日本政府にも自衛隊機にもJALやANAにも見捨てられたのだ。
 もはや日本人の脱出は不可能かと思われた時、二機の飛行機が飛来して日本人215名を救出。危険を冒したのは、トルコ航空機。制限時間75分前であった。トルコ側の言ったのは「エルトゥールル号の借りを返しただけ」と伝えられている。
 トルコは95年前のエルトゥールル号遭難救助の恩を忘れていなかった。だがこの決死の救出を、我々はどれほど記憶に止めているだろうか。我々は救出劇を、そもそも知らないのではないか。

 国家や組織を離れた素手素顔の日本人は、外務官僚や軍部より遙かに有効な外交関係を築き、国家や企業は南京大虐殺や強制連行を引き起し勲章と爵位を手にするのである。
 羽仁五郎は文部省廃止を説いた。外務省廃止を僕は主張する。大使館地下に温水プールやワイン貯蔵庫を作るのは、特権階級の再生である。 つづく

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